不可解な演算 封神演義番外編4

          太公望・楊ぜん・だっき



  「可哀相に」
  蜜を乗せた声が囁く。
  何も知らないままでいたかった耳に、獣の声が届く。
  「認めてしまえば楽になるのよ」
  気付くべきではなかったのに




不可解な演算


  

「後ろ向きなヤツだ」
  「昔の太公望ちゃんにちょっと似てるかしらん」
  「あそこまでウダウダしとった覚えはない」
  「そこが可愛いんでしょ」
  「うざったい。鍛え直してやらねば」
  「あら面白そう」
  「・・・・・・ちょっかい出すでないぞ」
  「独占欲?」
  「片腕に対してか?」
  「・・・・・・壮絶に可愛いわよん、太公望ちゃん」
  「そいつはどうも」


  納得がいかない。
  「また桃を盗みましたね太公望!」
  何でこんな事になったんだろう。
  「ちゃんと仕事するさスース!」
  間違ってる。
  「何処に行ったっスかご主人!」
  認められるわけが、無いじゃないか。


  「いらないの?」
  「―――――」
  「欲しくないとでも言うつもりかしら」
  「・・・・・・・」
  「睨んでるだけじゃ殺せないのよ、王子サマ」
  「何故ここにいる」
  「迷ったからよん」
  「どういう意味だ」
  「貴方が迷っているから、と言ったのよ」
  「何が・・・」
  「わらわが貰うわん」
  「セセセセ」
  「だってあの子、わらわの為に生きてきたんだもの」
  「師叔は・・・っ」
  「違うの?」
  「当たり前だ!」
  「貴方は?」
  「な」
  「何が欲しいの?」


  何喰わぬ顔であの人が笑う。
  「どうしたのだ?」
  何時だって飄々として。掴み所なんか何処にもなくて。
  どう見たって外見子供で僕より年下なのに、どう考えても中身ジジイで。
  だらしなくて怠け者で本当にどうしようもないのに。
  何故。
  「熱でもあるのか?のう?」


  把握し損ねた答えは、あの人が知ってる。多分。


  「誰が貴様なんかに」
  「あらん、残念。・・・・・・ねぇ、太公望ちゃん?」










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